Saturday, September 17, 2022

Pilot Café Bistrot

最初の晩を除いて、アテネの先生と一緒に通い詰めていたのが、このビストロでした。

24時間営業で、置いているお食事は… 朝はクレープ、昼はサンドイッチにサラダ、夜はイタリアン。
パイロット・カフェ・ビストロという名前で、インターコンチネンタル・ホテルのはす向かいにあります。ホテルの部屋で iPad のマップを眺めていて、近所のレストランをしらみつぶしに探した結果、ここが良さそうでした。

外気温が30℃ 超えの猛暑でも、ホテル前から地下道をくぐって、汗が噴き出す前に数分で到達。

内部は… この部分は3方をガラスで囲われた、温室みたいなブース席。エアコンはよく効いてます。
上写真は他のお客さんがほぼいない隙を狙って写しました。

初めて入った時は混んでいて、空いたブースをひとつ見つけ腰掛けましたが… アテネの先生が凍ってしまいました。

声を潜めながら、ふたりで会話したのはこんな内容。

「ここ… 他のお客さんは近所のバーのダンサーみたいだよ…」
「えっ!? じゃあ化粧の濃い姐さん達は、みんなパンパン?」
「人権弁護士はそんな差別語を使えないけど… そうみたい」
「じゃあ、残りのゴツい男達は… 客? それとも用心棒??」
「僕はそういうのに詳しくないから、判別できないよ!!」
パンパン盛りの付いた男衆がイヤなら、別の店に行く?」
「いや。ここがいい。こんなの滅多に見られないから興味深い」

人権派だけど、パンパン貯まってる客を観るのは楽しいってか??

以後、ここは二人の間で whore house(売春宿)または whores' kitchen というニックネームになりました♪

「今夜もパンパン宿で食事する?」
「ぁぁ… 客相はアレだけど料理は美味いから、いいよ♪」

こんなやりとりが毎晩繰り返されたわけです。
アテネの先生… ホントに人権派弁護士なのか、やや疑わしくなってきました。

このパンパン宿、パンパンが集まるガラス張りコーナーの手前に、ガラスの床があります。
上写真右手でサヨナラ(ビーサンを表すギリシャ語。まぢで)を履いているのは、近くのテーブルにいた少女。パンパンの娘では無い。

ガラスの床から見える地下室は、ワインセラーです。儂のワインセラーと同じくらい貯め込んでいる。
安物を抱え込んでいるのが我が家と同じで、とても親近感が持てました。

温室なブース席から、メインの屋内を眺めるとこんな感じ。
上写真左にガラスの床が見える。

キッチンやバーカウンターから離れていても、常連さん達がたむろすのがこっち側だからサービスは良い。
ビールを注文して、すぐ届きました。

アテネの先生はマンモス Μάμος という地ビール。儂はアムステルのノンアルコールを。
マンモスだけど、ぞうさんじゃなくてヒゲオヤヂの絵が… おっくうで理由は聞かなかった。

さて初日。最初に頼んだサラダはこれですが… 全ての注文品でこれだけが唯一ハズレでした。
Burrata  marinated cherry tomatoes with basil pesto
ブラータのサラダ マリネしたチェリートマトとバジルソース

水牛チーズのブラータは美味しかったけど、チェリートマトのオイルがくどい。オリーブ油には詳しいアテネの先生も「オリーブ油の質はともかく、これじゃ使いすぎ」という評価でした。

アテネの先生が注文したのが、豚の三枚肉。
Pancetta  slow cooked, with brown beer sauce & grilled vegetables
パンチェッタ スロークック、ブラウン ビア ソース、温野菜とともに

ひとくちもらったけど、フカフカに柔らかでとっても美味しい。
悔しい。
儂は明日また来てこれ食べたい!!…と、これがこの店に通い詰めた発端でした。(笑)

儂が頼んだのが、リゾットのリスト中に載っていた、フィデウアみたいなパスタ。
Mushroom barley  mixed mushrooms, rosemary, white truffle oil
キノコの大麦パスタ キノコ各種、ローズマリー、白トリュフオイルで

カタルーニャの米粒パスタが「フィデウア」ですが、こちらはもう少し大粒の大麦サイズ。
大麦なのは形だけで、使っているのはデュラム・セモリナ小麦のはず。茹で加減は上々。
キノコが数種類入っていて、パルミジャーノチーズを使ったソースに白トリュフオイル。
これはキノコの風味がとても良くて美味しかった。この一皿でこの店が気に入りました。

・・・客相はちょっとアレだけどね

お食事を終えて出てきたら、夕暮れ時でこんな景色。
お隣の、ドリーム・ガールズ・バーの壁にあった宣伝文句を読んで、戦慄が走りました

 観 て
 聞いて
 触れて
 嗅いで
 触って

う~ん・・・五感に訴えて楽しめるということですね? 儂はもういいや。歳だし。


そして2日目。

この日は夜早めにやってきたので、パンパン姐さんはいませんでした。
ただ、ブース席には安物の香水が『移り香』として残っていました…。

「パンパンの皆さんはいないけど、安っぽい香水がプンプン匂う…」
「その呼び方、人権派弁護士の前では控えて欲しい」
「売女は売り切れているけど、股間もっこりのおっさん達はまだいる」
「…。君がこんなにレイシストだったなんて知らなかったよ」
「最初に言ったじゃん。それに『売春宿』って呼んで通じたじゃん」
「公衆の面前でそういう台詞はちょっと…」
「でも英語だから。アテネってかなり英語が通じるけど。www
「英語の出来る出来ないにかかわらず、パンパンとか売女というのは…」
「じゃあ『売春婦』でいい? 今夜は売春婦の皆さんがいらっしゃいませんね」
「・・・もういいです。話題を変えましょう」
「じゃあ、とりあえずビールとパンを頼もうよ♪」
Bread with garlic  Traditional handmade bread with garlic cream & melted cheese in the oven
パンとガーリック 伝統的な自家製パンにとろけるチーズ載せ天火焼き、ガーリッククリーム添え

この店ってば… パンパンはいくらでもいるのに、パンが出てこない。
もとい。
ここんちは無料でパンが出てこないから、何かパンっぽいものを頼もうとして選んだけど…

「なんか… 思ってたのとずいぶん違う。普通にガーリックトーストを想像してた」
「僕もそう。ギリシア人だけど、これが伝統的か判らない。美味しそうではあるけど」

純正ギリシア人にも、なんかちょっと違うようですが… 味はとても良かった。
テクスチャの柔らかいフカフカのパンで、溶けたチーズにガーリッククリームがよくあう。
美味しいから文句ありません。…てか、パンが欲しいならこれをまた頼むと思います。

アテネの先生の主菜は、ビフテキでした。
Beef Steak  with mashed potatoes
ビーフステーキ マッシュポテトとともに

すごく簡単な説明だし、書いてあるとおりにビフテキとマッシュポテトしか乗ってない。
ポテトが黄色いのだけが工夫だと思います。

「このポテト… 黄色いのは何故だと思う?」
「サフラン入れてるんじゃない? 香りで判らない?」

ポテトの風味を確かめたアテネの先生、「どうもそうらしい」と納得しました。
西洋料理だから、クチナシの実で色を付けてると思えないしね。(笑)
でも本当に本物のサフランだったら、高級食材なので立派です。

で、骨付きのビフテキでしたが…

「これ、アメリカだとT-ボーンステーキっていう部分なんだけど、Tの反対側のフィレ肉がいない…」
「え?どういうこと??」
「一品でサーロインとフィレが楽しめる部位なんだけど… 高い方、フィレが欠損してる
「やっぱり、値段がこなれてるからかなぁ」
「だから『ケチらずにリブアイを頼めば?』って言ったのにぃ」
「だって… 18 ユーロと 33.5 ユーロじゃ、倍くらい違うよ!」
「今宵は儂がおごる番だから遠慮しただろ? せっかくの機会だったのに」
「今度また考えるよ…」

またビフテキを頼もうとしたらリブアイを無理強いするつもりでしたが、今回はもう頼まなかった。

儂の方は、予定通りにパンチェッタで。
パンチェッタ、というとベーコンの一種だと思っていました。
でも、ベーコンみたいな加工肉に限らず、『豚バラ肉』がパンチェッタらしいです。

これ… 角煮みたいに柔らかな調理がされていて、とてもいけてます。

ステーキとパンチェッタの添え物として、別売りのソースをひとつ注文。
マッシュルーム・クリームソースです。ガーリックも効いていて、とても美味しい♪

5種類ある別売りソースで一番高額(たった2.50ユーロ)だけど、高いだけのことはあります。

アテネの先生はビフテキにかけて、ニッコリ。儂もパンチェッタにかけてみました。
本来のブラウン・ビア・ソースが「甘味の少ない BBQ ソース」みたいなので、一緒でも良い相性です。
ふたりで『肉たっぷりにキノコのソース』を堪能した晩でした。


そして3日目。

この晩も日没前から食事に来ましたが、ダンサーのお姉さんと同伴のおじさん(憶測)がチラホラいました。

「ギリシア人って普通20時過ぎから夕食だよね?みんなショータイム前の食事?」
「多分そうなんだろうけど… 静かに観察して。意見を述べなくていいから」

儂の英語を聞き取られたらヤバすぎる。…と思っているんでしょう。
こういう商売のみなさん、言われ慣れてて気にしないと思うけど…。
アテネの先生がウブっぽくて、なんだか楽しくなりました♪ ←目線が男売女

この晩の前菜は「なんで中華が紛れ込んでるの?ピレウス港のせい??」という一品。
Mix Spring Rolls  with toasted sesame, "sweet & sour" and spicy sauce
ミックス春巻き 炒り胡麻、甘酸っぱいソースにピリ辛ソースとともに

債務の罠でピレウス港を中華に乗っ取られたのは確かで、アテネで見かける東洋人はやたら中華です。そういった事情もあるんでしょうか、なぜかイタリアンなアイテムの中に春巻きが混ざっていました。

円筒形、三角形、巾着型の3種類あって、巾着が美味しかった。
中味はみんな屑野菜か玉子みたいなものが入ってて、冷凍ものだろうから大差はありませんが…。

添付されていた「ピリ辛ソース」が、余韻がメッチャ辛いタイプ。でもサクサクの春巻きと絶妙。別途注文したソーセージにつけて食べても、なんだかチョリソっぽくなって、なかなか美味しかった。

その『ソーセージの前菜』がこちら。
Sausage Trilogy  with spicy tomato sauce and aromatic yogurt
ソーセージ三部作 スパイシートマト と 香るヨーグルト ソースで

肉質の違うソーセージが3種類に、春巻きのソースまで加えたら4種類のソースで色々楽しめました。

そして、アテネの先生の主菜は、ポークです。
Pork Steak  with fresh french fries and lemon sauce
ポークステーキ 揚げたてフレンチフライ、レモンソースとともに

今夜はビフテキならぬトンテキですが… 嬉しそうに食べていたので美味しかったようです。
ギリシアとトルコ、似たようで決定的な違いは、やはり豚食でしょう。

儂は… ミートソースのパスタで。
Bolognese  Pappardelle with ragout beef & parmesan
ボロネーゼ パッパルデッレにビーフのラグー、パルメザン

ボロネーゼに惹かれたのではなく、久しぶりにパッパルデッレを食べたくなったのぢゃ。

何も注文付けずに出てきたのが、とても上手にアル・デンテ仕上げなので驚きました。
ビーフのラグーもやや酸味が強いものの、上出来の範囲です。パルメザンもたっぷり添付。

ここんちはパスタが7種類もあるから、いずれ順番に試してみたいものです。


そして4回目。最終回です。

この日もギリシア人の夕食時間より早め。
姐さん達は一組だけで、貯まってるおじさん達も2組だけでした。

今日から入ったというバイトの兄さんに、マンモスビールとアムステル・ゼロって頼んで…
「あれ?ゼロだけどコーク・ゼロだよ?」
「むしろこの方がいいかも。食事にあいそうだし、氷とレモン入って冷え冷えだし♪」

間違って届いたコーラでいい、と思った理由は… パンの代わりにピザを頼んでみたからです。
Pizza Pepperoni  Tomato sauce, mozzarella, mixed peppers, pepperoni
ペパロニ ピザ トマトソース。モッツァレラ、ミックスペッパー、ペパロニ

届いていきなり二人ででかっ!と叫びました。
それに、このピザって生地が分厚い… 儂の好きくないタイプ。

「だからバイトくんが「ピザに主菜ふたつ頼むんですか?」って再確認したんだ…」
「二人で話し込んで… ちゃんと訳せよ。てか、ピザが余ったら君の明日のランチ」

結局、ピザは半分だけやっつけて、残りはお持ち帰りの箱に入れてもらいました。
儂は帰国するので先生のランチです♪  フレンチフライもたっぷり添付で体に悪そ。

主菜のために頼んだ添え物は… またキノコ。でもここんちのキノコって美味しいから。
Trifolati Mushrooms  mix sauteed mushrooms with garlic, rosemary & white wine sauce and lemon
キノコのトリフォラティ 各種キノコの ガーリック、ローズマリーと白ワイン炒め。レモン添え

トリフォラティというのは食材をガーリックやパセリと一緒にオリーブ油で炒めるイタリア料理だそうです。
イタリア同様、ギリシアもオリーブ油の本場なので上出来な味です。

美味しくて、主菜が届く前にキノコを想定以上に食べちゃったところで、主菜の到着。
なんと、ハンバーグステーキです!! しかもふたりで同じ物頼んでます!!

注文かける前に、イマイチ意味不明で悩みました。

「ねぇ… バーガーは別グループになってるのに、メインに載ってる Beef Burgers って何?」
「それ、いま僕も悩んでた。パンに挟まれていないとは思うけど…」
「そしたら普通サルズベリ・ステーキ Saulsberry Steak って呼ぶんだけど… 英訳が怪しい」
「初日だけど(笑)バイトくんに聞いてみようよ」

アテネの先生がギリシャ語で聞きました。

「ビーフバーガーって、何? ハンバーグステーキの事?」
「…すいません、初日なので。キッチンで確認してきます」

多分こんな会話したんだと思います。バイトくんはダッシュでキッチンへ向かい、すぐ戻ってきました。

で、「サンドイッチではなく、ひき肉の部分だけのステーキです」という回答を得ました。
Beef Burgers  with fresh potatoes & Carolina BBQ sauce
ビーフバーガー 揚げたてポテトとカロライナBBQソースとともに

届いて… 同じ物頼んだのは「僕も食べてみたかった」って言うから許すとして… 
メニューの Burgers って、なぜ複数形なのか、届いてから理由がやっと判った。

「なんでパティが2個あるんだよ!?」
「僕も聞いてないよ、多いぶんにはいいだろ」
「確かに。多すぎたら残せば・・・」
 はっ!

残せばいいや、と言いかけた時点で、アテネの先生の視線が鬼のようで恐かった。(笑)
ここまでフードロスが許せないのね、せんせい…。

さらにハンバーグをカットしてみて、予想外の出来映えにビックリしました。
ナイフを入れたら、肉汁がジワジワ出てきます。日本国外では、我が家の近所にあった洋食屋さんを除けば、こんなの初めて見たかもしれない。焼き加減は、芯まできちんと火が通っていて安心。でもフンワリ仕上げで上出来です。

がんばってハンバーグは完食しました。でもポテトは無理だったので、先生の明日のランチになりました。マッシュルーム炒めを合わせて食しても美味しい。次回はマッシュルームクリームソースで試してみたいです。

以上、お食事4回分をひとつの記事にしたので長大ですが、ここんちは今回のアテネ訪問でのめっけもんです。

Pilot Cafe Bistrot
Λεωφ.Ανδρέα Συγγρού 138 &, Φραγκούδη, Καλλιθέα 176 71
+30 21 0924 5638
Open: 24 hours

いつもお食事が終わると、夕暮れ時でこんな様子。
モーターウェイの向こう側にインターコンチネンタル・ホテルが見えます。
あの、角の部分の一番上から3番目が お気に入りの757 号室。二重窓でクルマの騒音は聞こえません。

あとは、最終日に訪れたバクラヴァ屋さん等を御覧にいれてから、もう復路の様子になります。


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